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移住先で伸び伸び暮らしながら、都心での仕事やコミュニティとの繋がりも保つ
前回のインタビューはこちら https://tabisumu.jp/special/list/url10
都心を離れ地方で暮らす方に、移住についてありのままを伺うシリーズ。今回は、東京都北区から長野県佐久市に移住した桑原さんにお話を伺いました。
不動産探しで苦労した経験を活かし、移住者向けの賃貸不動産会社を起業
―ここからはお仕事についても詳しく伺います。移住にあたり働き方を変えたとのことですが、どんなお仕事をされていたんですか?
東京港区にある不動産デベロッパーに勤めていました。私は総務など管理系の仕事をしており、長く働いていたこともあって一定のポジションをいただいていました。ただ、コロナ禍でもリモートワークに対応しておらず、移住をきっかけに退職を決意。これを機に、毎日会社に通勤するというライフスタイルを変えようと思いました。
そこで、「在宅で仕事ができる」という基準で転職先を選びました。採用してもらってから1年は出勤し、移住後は業務委託としてフルリモートで働いています。また、そこはフルタイムでの勤務ではなく、働く時間を前職のころより減らしました。そこで浮いた時間で、夫婦で共同起業した会社を経営しています。
―すごいですね、どのような会社を始められたんですか?
不動産賃貸業の会社です。自分たちが移住するときに良い物件がなかなか見つからなかったことや、もし見つけても競争率が高かったことがきっかけで、この事業を始めました。当時、空き家自体はあっても貸していなかったり、古すぎてこのままでは住めなかったり、家族で移住するにはサイズが合っていないなど、なかなか条件がそろいませんでした。この経験があったからこそ、移住者にとって快適な住まいを提供したいという思いに繋がっています。
実際に、空き家を買ってリフォームし、大日向小学校に通う家族向けに貸し出しています。自分たちが経験したからこそ、どんな家がよいか分かっているのは強みです。
―過去のご経験を活かし、移住に際して苦労したことを逆手にとってビジネスを始められたんですね。
はい。私は不動産業界にいましたし、宅地建物取引士の資格があり、夫はFPや電気工事士をもっているので、一緒にやっています。夫は移住前から同じ会社に所属し、リモートでWEB関連の仕事をしているので、その合間にこちらの事業にも取り組んでいる形です。
また、私は仕事以外にもいろいろなコミュニティに参加しているのですが、そちらも完全にリモートで対応するようになりました。
―コミュニティについて詳しく教えていただけますか?
『一般社団法人母親アップデート』という組織で、理事を務めています。「母親を、もっと面白く」というビジョンのもとさまざまな活動をしているのですが、私はコミュニティ運営やインフラの整備、理事会の参加などをしています。移住してからは完全リモートで参画しています。
もう一つのコミュニティは、銀座にあるスナック『DelSole』(デルソーレ)です。ここは住所非公開の完全招待制スナックで、20人のママが日替わりでお店に立っています。都内にいた頃は私もママをしていたのですが、移住してからはコミュニティマネージャーとなり、シフト調整などの店舗運営業務や、ママ達のサポートをするようになりました。
所属していたコミュニティに、移住後もリモートで参加
―職場と家庭だけでなく、いろいろな居場所があるのはとても素敵ですね。
とても楽しいです。ただ、移住してからは生活が落ち着いたと感じます。以前は毎週3日は人と会ったりオンラインで会合をしたりしていました。夫も協力的で、娘の夜ご飯やお風呂などを担当してくれていました。
今は、ほとんどがリモート参加で家にいる時間が長いです。以前の生活は楽しかったのですが、もっと家にいたいという思いもあったので、理想の生活ができています。長野に来てからの方が、家族と過ごす時間が増えました。
―長野に来てからも楽しく暮らされていることがわかります。では反対に、移住して困ったことはありましたか?
都内ではあまり運転していなかったので、どこに行くにも車で移動することが、慣れるまでは大変でした。以前は公園が近所にありましたが、今は図書館や科学館などに行くにも10分は運転します。
また、水道光熱費が2倍になって驚きました。ただ、賃料は下がるので、支出ばかり増えるというわけでもありません。
―東京と比べると何にお金を使うかが変わりますね。移住を考えている方は「収入が下がったらどうしよう」という不安を抱えている方もいるのですが、何かアドバイスはありますか?
私は移住するにあたって仕事をリモートにしましたが、オンラインで働くからと言って単価を下げる必要はありません。出社できないから安くした方がいいと考える人もいますが、きちんと与えられた業務をこなせば、どこにいても貢献度は同じです。
周りの移住者を見ても、もともといた都心部での仕事をそのまま続けている方はたくさんいるので、これから移住する方もそういったパターンが多いと思います。だからこそ、自分で単価を下げずにしっかり会社と交渉してみてください。
―移住者仲間の方も、都心での仕事を継続されているんですね。
はい。ただ、それだけではなく、こちらで地域おこし協力隊を始めたり、市役所と連携してセミナー講師やコーチングをしたりする方も多いです。もともとの仕事だけ、移住先で見つけた仕事だけではなく、二足の草鞋を履くと良いと思います。
多様性を学び伸び伸びと成長できる環境を求め、野沢への移住を決定
―現在は佐久市にお住まいですが、このエリアの魅力は何ですか?
不動産ビジネスの観点から言うと、私の住む野沢地域は地価が上がっています。佐久穂町は大日向小学校が出来たことで人が集まっていますが、あまり賃貸物件がありません。そこで佐久穂町からほど近い野沢地域の方で暮らす方が増えていますし、市も移住支援を積極的に行っていて移住者も多く、地価が上がっているのだと思います。
また、私の住んでいる野沢地域は子育てしやすい環境です。行政が支援に力を入れており、4年後には大型の子育て支援施設ができます。そこは、妊娠中の方から18歳までのお子さんを持つ方が利用できます。
―そもそもの移住のきっかけがお子さんの教育だったからこそ、野沢を選ばれたんですね。
はい、大日向小学校には行けなくなりましたが、そのまま東京の小学校に通いたいという気持ちにはなりませんでした。これは、東京の教育が良くないというわけではなく、東京での教育は、習い事の種類が多いなど地方にはない魅力もあります。ただ、都内では偏差値や受験がフォーカスされがちですが、ここに違和感を持ちました。
娘にはもっと、生き方や価値観、どういう風に暮らしていくかについて、自然と共生しながら多様性を持って柔軟に生きていってもらいたいと思いました。都会の学校は人数も多く一人一人に対応することは難しいので、これを実現するには地方の学校でのびのびさせた方がいいと思い移住しました。
―都心と地方の教育は、それぞれ良いところが違いますよね。
はい。なるべく、「多様性を認めて、みんな同じではないけど個性を認め合って伸ばしていこう」という考えを持てそうな学校に通ってほしいと思いました。日本はジェンダーギャップ指数が121位という国ですが、その中でもできるだけフラットに考えられるようにしていった方がいいのではと感じます。
野沢でそこまでのことができるかはまだわかりませんが、少なくとも子育て世代に対して様々な制度を設けたり、支援センターを作って地域で子育てしていこうという動きはあります。
―たしかに、下地が作られている感じはありますね。
仮に大日向小学校に落ちても、「佐久市で暮らす」という選択肢があることを、これからアピールしていきたいです。そのために情報を発信したり、自分自身の働き方や暮らし方を見つめて、ゆっくり自分の軸を見つけていきます。
前回のインタビューはこちら https://tabisumu.jp/special/list/url10