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【後編】「移住お試しシェアハウス」の運営から広がる、地域の方との暖かな交流

都心を離れ地方で暮らす方に、移住についてありのままを伺うシリーズ。今回は、東京都中央区から長野県上田市に移住した辻さんにお話を伺いました。

前編はこちら https://tabisumu.jp/special/list/url15



不動産の知見を活かして移住先でも新しいビジネスを始める


―前回は、移住までの経緯と長野県で始められた活動について伺いました。改めて、辻さんの行動力や創造性には感銘を受けます。

 ありがとうございます。でも、私も最初から信州ならではの活動をしていたわけではありません。いすみ市から引っ越してきた頃はライターとして、都内にいた時から付き合いがある東京の出版社や新聞社からの案件を受けていました。取材する相手も首都圏の経営者やタレントさんがほとんどです。子どもがいれば学校を通じて社会参加ができますが、それもなくお付き合いといえばご近所の方くらい。個人的には、移住したというより「長期滞在している別荘族」という感覚で、コンプレックスでした。

信州でのスキーやスノーボードは、雄大な自然を感じられる

でもあるとき、長野から東京に向かうバス停で知らない人に話しかけられ、そのご縁から長野で小学生のスキー学校のインストラクターのアルバイトをするようになりました。ライターの仕事とは内容も出会う人も違い、そこで初めてリアルな信州の子どもたちの姿に触れ、新鮮でした。また、地域社会に根付いて生きている実感があり、すごく楽しかったです。そこで「地元経済圏に巻き込まれる働き方もしたい」と思ったことは、その後のシェアハウスやシェアヴィンヤードに繋がっています。


―そんな時期があったなんて、今では想像できませんね。

おかげさまで現在は、地域の方とのつながりも強くなりましたし、行政の方から「こんな移住相談者が来ているよ」とご紹介いただくことも増えました。近所の方から「シェアハウスのみんなでどうぞ」と大量の野菜をいただくこともあります。地元の人と溶け合って仕事しているなと実感しています。

 

 ―シェアハウスを起点に色々な広がりがありそうですね。前回から辻さんのお話を伺っていると、不動産というのが一つのキーワードだと感じます。

もともと不動産は好きでした。一人暮らしを始める時に勝どきのマンションを買ったのですが、その後、また別のマンションを買いました。というのも、家から近い月島のもんじゃ屋さんによく行っていたのですが、どのもんじゃ屋さんも多店舗展開していて。「もんじゃ屋さんは儲かるんだな」と思って、自分も店舗物件を買おうと思いました。

そこから毎日、不動産情報をチェックしていくにつれ、エリアの目利きになりました。そんな時に新しいタワーマンションができると知り、調べたら相場より安かったので購入したんです。その後は、物件を売却して渋谷区にビルを買い、大家業とライターを平行していました。

 

―昔から物件に対して興味があったんですね。

はい、若い時から不動産にアンテナを立てておくと、後々移住する時に役立つと思います。田沢を選んだのも、ここで培った目利力でこれから伸びると思ったからです。

 

―移住に際し収入面で不安を覚える方は多いですが、不動産の知見があれば場所を選ばず暮らすことができそうですね。

そうだと思います。不動産でなくても、手に職があれば安心です。シェアハウスに来る方も、看護師の方や士業の方、ネット環境があればどこでも働ける方が多いです。

行政は移住者に来てほしいという思いがあるので、そのために仕事を作らなくてはと考えているようですが、実際にはどこにいても稼げる人が移住しているように思います。


 

快適な気候や愛にあふれた地元の人とのつながりを楽しむ

―辻さんはいくつかのビジネスをされていますが、一日のスケジュールについて教えてもらえますか?

季節によって変わりますが、夏は「草刈りのために生きているのでは」と思うくらい草刈りをしています。上田にハーフビルドした自宅、シェアハウス、シェアハウスのメンバーで使っている畑、シャアヴィンヤード、シャアヴィンヤードのための物件を持っているので、朝5時に起きて手入れをしています。

シェアヴィンヤードの土づくりのために植えた蕎麦をみんなで脱穀。蕎麦粉はフランス風クレープガレットにしてみんなで食べた。


ある程度刈ったら朝食を食べて、農作業をして、ランチをして、午後からライターの仕事をすることが多いです。千曲川ワインバレーではあちこちでワインを造っているので、夕方から地元のワインを飲み始めています。

 

―東京ではできない、楽しそうな暮らしですね。

田沢は素敵なエリアですからね。この辺は晴天率が高くぶどうにとって良い環境ですが、これは人にとっても快適です。

東御市は人口3万人ですが、ワイナリーが12箇所あります。さらにアトリエ・ド・フロマージュというチーズの工房の本店や、ハモン・ヤエハラという生ハムの工房があります。ワインを中心にそれに合うこだわりの食材が集まってきて、南傾斜で日当たりもいいですし、住んでみると「ここはフランスか」と思えることもたまにあります。

東京を離れて寂しくないかと聞かれることもありますが、移住したのはちょうどSNSが流行り始めた時期だったので、離れていてもみんなの動向はわかります。引っ越しても関係が続きやすいですし、ちょっと変わったことをしているのを面白がって遊びに来てくれるので寂しさはありません。

 

―地方で新しいことにチャレンジしてみたい方にとって、辻さんはロールモデルになると思います。ちなみに、移住をしてみてドロップアウトしてしまう方がたまにいるのですが、そういったお知り合いはいますか?

今のところはいません。ネットには「移住したものの合わなくて都心にまた戻った」という記事もありますが、戻った理由は「移住先での仕事がうまくいかなかった」「気候が合わなかった」「近所付き合い」などだと思います。その地が好きで何度も通っていればある程度予想できることなので、「なんとかなるだろう」と勢いで移住すると、上手くいかないのかもしれません。

この町には、ワインとそれにあうものたちが集まって来る


その点、私がシェアハウスをやっている東御市では、ワイン好きが高じてこの地に何度も通って移住を希望される人が多いので、引っ越してきてからも楽しく暮らせるのだと思います。

「近所づきあい」という点では実際に住んでみないとわからないこともあるかもしれませんが、私のまわりに関していえば、集まって来る人もご近所の方々も、いい意味で「ヒッピーみたいな人」が多いんですよ。みなさん、ご自身では自覚されていないと思いますが。


―ヒッピーですか?

はい。私は夫に会ったとき、「自分では気づいていないかもしれないが、あなたのような人間をヒッピーと言うんですよ」と言われました。当時はどういう意味だろうと思ったのですが、よくよく調べたらヒッピーとは1960年代にアメリカで生まれ、全世界に流行したムーブメントで、自然回帰や愛と平和を訴え、自由に生きる若者のことだそうです。たしかに当てはまっている部分があるかもと思いました。

シェアハウスを始める前に「この家をどう使ったらいいと思いますか?」と色んな方に聞いたのですが、おばあちゃん世代の方から「若いお母さんが子どもを連れて来て、近所のおばちゃんがお茶を飲みながら面倒をみることで、お母さんにリラックスの時間を作ってあげるのはどう?」「子ども食堂を開いてみたら?」「奥さんに先立たれて外に出てこなくなった旦那さんが多いから、そういう人たちがお喋りしたり体を動かす機会を作ってみるのは?」など意見が出ました。

どれも「自分が欲しいもの」ではなくて、「お嫁さん世代やよその独り暮らし世帯にとってあったらいいもの」です。まさに、ラブアンドピースな提案ですよね。

また、この辺りでは専業農家は少ないですが、大地を耕し、自分たちが食べる野菜は自分たちで作り、必要なものは自分で作る人が多いです。物質的なものより内面の豊かさを追求するのは、ヒッピーのような暮らしだと思います。


ブドウの新芽の天ぷら。5月の芽吹きの季節しか食べられないブドウ生産者ならではの楽しみ。


そういった「農ある暮らし」に憧れて移住してくる人も多いです。移住する人も受け入れる側も同じような価値観で、生活も精神的にも自立している人が多いので、「村八分」や「いじめ」みたいなことは起こらないのかもしれません。

また、若い人もたくさん移住してきて「この地域を盛り上げたい」という情熱を持っています。彼らを見ていると、東御市はラブアンドピースな人が多くて最高な土地だと実感します。

―素敵な人がたくさんいらっしゃいますね。子ども食堂などの案も出たとのことですが、今後何かやってみたいことや、目指しているものはありますか?

私は、夢に向かって一直線で努力するタイプではありません。その時々でやりたいことができたり、物件を購入したのを機に「ここにあう活動は何かな」と考えます。だからこれからも、新しい物件と出会ったら、そこから何をするか考えていく予定です。

 

―では、最後にこれから移住をしたいと考えている方にメッセージをお願いします。

自宅用の物件は、買ってしまうと取り返しがつかないように思えるのではないでしょうか。そうであれば、シェアハウスを利用してみてください。私が運営しているもの以外にも、全国に多数あると思います。そこで馴染めたら移住するといった形で二段階にわけると、一歩目を踏み出せると思います。


前編はこちら https://tabisumu.jp/special/list/url15