【後編】移住と同時に会社を創業。越後湯沢で移住者支援、移住促進を手がける
- 【福井県坂井市】結婚×移住で育む家族のカタチ
- 【福井県坂井市】自治体主催の婚活イベント(移住促進&マッチングツアー)参加レポ
- 北海道根室市イベント『北海道移住セミナー「食と自然の宝庫#ねむろ暮らし」』が開催!
都心を離れ地方で暮らす方に、移住についてありのままを伺うシリーズ。
今回ご登場いただいたのは、2019年に千葉県流山市から新潟県・越後湯沢に移住した伊藤綾さん。
現地では移住希望者のための職業紹介・スペース運営・起業支援などを行う「きら星株式会社」を創業し、移住促進を行っています。
後編では、「きら星株式会社」の事業について詳しく伺います。
取材・文/河崎志乃(写真は伊藤さん提供)
—「きら星株式会社」の事業内容を教えてください。
越後湯沢では、湯沢町役場 移住相談窓口の業務全般を行っています。移住希望者のサポート業務として、住まいのことから学校、買い物環境など生活全般、また一番大事な「仕事」を支援するため、職業紹介やコワーキングスペース・シェアオフィスの運営などをしています。
年間の相談件数は約200件で、実際に移住された方は40名。約20%の方が移住していることになり、これは非常に高い数字だと思います。
きら星のシェアオフィス
—高い移住達成率を実現できているのはどうしてでしょうか。
一つは、仕事も含めたトータルの提案ができることが圧倒的な強みだと思っています。きら星ではこれを「ワンストップ移住相談」と呼んでいます。他の自治体では、窓口や地域おこし協力隊の担当者に移住希望者からの相談があると、家は不動産屋、仕事はハローワークに聞かなければならない、役場は補助金の相談や手続きができるが生活環境などに関しては自分で調べてなければならない、というように、完全に縦割りの対応になってしまうところがほとんどです。
きら星の場合、不動産の仲介は免許がないためできないのですが、相談者の希望に近い物件をこちらで探し、「〇〇不動産に今こんな物件があるので、お試し移住でこちらに来るときに予約して内見してみてください」ということろまで情報提供を行います。移住希望者のライフスタイルをヒアリングして可能な限り生活全般の提案をしていることが、現在の成績につながっていると思います。
湯沢町の町並み
—移住希望者にとっての一番の障壁は何でしょうか。
最近はテレワークで移住する人も増えていますが、移住先で転職したいという人にとっては、やはり仕事探しが一番大変です。首都圏から地方に来て転職すれば収入が落ちるということは理解している人が多いのですが、働き方についてはイメージとのギャップに悩む人がほとんどです。
例えば東京では年間休日120日が当たり前になりつつあるところ、地方では105日でも多い方。地方に来てのんびり働きたいと思う人にとっては、休日の少なさがネックになります。きら星では、企業担当者と移住希望者の面談の機会を作り、休みが少ない分残業も少ないことや、一緒に働くスタッフの人柄の良さなどを伝えてもらい、前向きに転職が考えられるよう促していますが、企業が変わっていかなければこの先は難しいと思うこともあります。
—今後の展望や、新たな取り組みなどについて教えてください。
きら星にはさまざまな観点から移住の相談が寄せられます。例えば車を持っていないが暮らせるのか、雪に慣れていないが問題ないかなど。その場合は、越後湯沢では難しくても他の地域ならおすすめできるということもあります。提携する地域を増やして選択肢を増やし、あらゆる相談者が本当にやりたいことを地方で実現できるようお手伝いをしていきたいと思っています。
移住促進以外の新たな取り組みとしては、地域の中で経済が循環するシステムを作りたい、そしてその根幹となるのがエネルギーだと考えています。越後湯沢は町の9割が森林ですので、その森林を使って小型のバイオマス発電所をたくさん作り、集落の中に電線が無いオフグリッドな町を作るという構想を立てています。地域の中でエネルギーの地産地消ができる仕組みをつくるというビジネスです。そのために発電機器を見に行ったり、山の状況を見に行ったり、有識者の方とお話したりという準備を始めています。
また、越後湯沢に来てから、企業からクリエイターを紹介してほしいという相談を受けることが増えました。そこで株式会社デルタマーケティングという組織の中で、新潟県の地域に密着したクリエイターのプラットフォームの開発を行っています。
—移住を希望する人にアドバイスをお願いします。
インターネットで拾える情報はごくわずかだと思っています。インターネットで調べることも大切ですが、それだけでは時間が過ぎていくばかりです。お試し移住を実施している自治体も多いので、ぜひ活用してください。越後湯沢でも、源泉100%掛け流しの温泉がついたリゾートマンションで、1日あたり1000円で滞在することができます。
あとは、いかに早い段階でその土地の水先案内人的人物と繋がれるかがひとつのポイントです。ぜひそういう人にコンタクトしてみてください。そして、自分はオープンマインドでいること。地域の人と積極的にコミュニケーションを取ろうという姿勢が大事です。
越後湯沢は360度山に囲まれていて自然が豊かな町です。日々移り変わる四季の表情を見ながら、冬にはスキーやスノーボードも存分に楽しむことができます。ぜひ越後湯沢にも足を運んでみてください。