【前編】「まるで海外!」長崎県・五島列島に恋した女性が“絶景と深い歴史”に感じること東京と五島を月1ペースで行き来している鈴木さん。「五島は可能性の塊」と感じる理由を伺います
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さまざまな地方での暮らしについて“ありのまま”を伺うインタビューシリーズ。今回ご登場いただくのは、長崎県・五島列島に惹かれ、東京都と月1回のペースで行き来しているという鈴木円香(すずき・まどか)さん。
鈴木さんは編集者、メディアプロデューサー、地方創生プロデューサーと多くの肩書を持ち、各所で活躍されています。そして、東京で仕事を続けながら、「一般社団法人みつめる旅」の代表理事として、五島でのワーケーション事業や関係人口創出プロジェクトなどにも精力的に取り組んでいます。
前編では、「五島と恋に落ちた」と話す鈴木さんにその魅力や五島で活動することになった経緯などについてお話を伺いました。
文/田代祐子
撮影:廣瀬健司
ここはアフリカ?イタリア? 五島は可能性の塊だった
――本日はよろしくお願いします。まずは鈴木さんと五島列島の出会いについて教えてください。
鈴木円香さん(鈴木さん/以下同じ): AbemaTVの「Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース〜」という番組で、レギュラーコメンテーターをしていた時に、「おひとりさま地方移住女子」という企画があり、40代で五島に移住した友人に出演してもらったんです。東京の広告代理店でバリバリ働いていたのですが、過労で体調を崩し移住をしたそうです。
彼女が五島市役所で働きながら鍼灸師をしていたこともあり、五島市役所の広報の方たちも現場に連れてきてくれて。「ぜひ五島に遊びに来て」というお誘いを受け、2017年のゴールデンウィークに、家族で10日間ほど五島を訪れたんです。それが私と五島のファーストコンタクトでした。
――初めて訪れた五島はどうでしたか?
鈴木さん:景色が素晴らしくて、すごく気に入りました。そして、ものすごくポテンシャルのある場所だと感じたんです。伸びしろがめちゃくちゃあるなと。
撮影:廣瀬健司
――どんなところにポテンシャルや伸びしろを感じたんでしょうか。
鈴木さん:海に山、空、とにかく美しい風景ですね。キレイな空と海があって、福江島(※)は赤土で山がちなクネクネした道が「アフリカっぽいね」とか、「イタリアみたいだね」という人もいる。実際、車で走っていると、「あれ、ここはどこだっけ?」なんて気持ちにもなるんですよね。多面性を持ったステキな島でもあります。
私は取材でアフリカへ行ったり、旅が好きで世界中を巡っているのですが、五島に来たときに、そんな“無国籍さ”に魅力を感じて、一瞬で好きになりました。当時はまだ世界遺産にもなってないですし知名度も低かったので、世界レベルで戦えるポテンシャルがあるのにもったいない!と思ったんです。
※福江島:五島列島の南西に位置する島。五島列島のなかで最大の面積を誇る。
偶然の出会いから編集者魂に火がついた
――そこから、どう五島と関わっていくことになったのでしょうか?
鈴木さん:先ほど話した五島に住む友人と船舶免許を取ることになって、数か月後にまた1人で五島に行きました。実技のほかに学科試験もあるので、カフェで勉強をしていると、五島の魅力を的確に切り取ったステキな写真集が置いてあったんです。
その撮影者は廣瀬健司さんという方だったのですが、実技試験のときに船でブイを浮かべていたアルバイトのおじちゃんと同じ名前だったんですね。「えっ?」と思って本人に話を聞いてみると、なんと同一人物で!
ここで、「まだ誰にも見向きされていない、可能性を秘めた島と、素晴らしい才能を持つカメラマンを世に広めたい!」という私の編集者魂に火がついてしまって(笑)。まず写真集作りに着手しました。
撮影:廣瀬健司
――それがフォトブック『みつめる旅』ですね!
鈴木さん:そうなんです。「毎日が絶景プロジェクト」を立ち上げ、五島の知られざる魅力と暮らしの空気を伝えるフォトブックの制作をスタートしました。制作費はクラウドファンディングで募り、2018年5月10日「五島の日」にフォトガイドブック『みつめる旅』の発行に至りました。1000部刷りましたが、基本的にはネットで販売をして、すぐに在庫切れとなるほど注目していただけたんです。
この本がきっかけで、五島に興味を持ってくれる人とご縁もできました。当時、WEBメディア「Business Insider Japan」の編集長だった浜田敬子さんの目に留まったことも大きくて、ここからワーケーション事業へと繋がっていくんです(※詳しくは後編)。
美しい風景と深い歴史 島民は優しさにあふれている
――フォトブックの中のコピーに悩まれたという話を伺ったことあります。
鈴木さん:五島は本当に海がきれいで、風景ひとつひとつがすごく美しいんですよ。食材も豊かで食事もおいしい。こんな幸せな場所で、過去には隠れキリシタンを迫害し、壮絶な拷問がおこなわれていたことも…。隠れキリシタンの歴史を描いた有名作品『沈黙』の作者・遠藤周作氏の文学館が長崎市にあります。
海をみおろす場所に文学碑があるのですが、そこには「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです」と刻まれています。遠藤氏がこの碑のために特別に著した文章だそうですが、五島に通えば通うほど胸に刺さる言葉です。
この相反するような2つの明暗といいましょうか、それが共存しているところも、五島の魅力的な部分でもあるので、そこがうまく伝わればと思って考えました。
また、そういった歴史があるからこそ、五島の人たちはやさしさにあふれているとも思います。「島」というとちょっと閉鎖的なイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、イベントなどを通して感じるのは、五島の人たちって、すごくよそ者を柔軟に受け入れてくれるんですよね。
そういうあたたかい島民性みたいなものを、通えば通うほど感じます。そういった部分もあり、年々移住者も増えているんだろうなと思います。
(後編へ続く)
鈴木円香さんプロフィール
出版社の編集者、WEBメディアの編集長を経て、一般社団法人みつめる旅を設立。長崎県・五島列島を中心にワーケーション事業や地方創生事業等を手掛ける。●みつめる旅:https://mitsutabi.jp/
長崎県五島市ってどんな街?
5年間で1,000人超の移住者を受け入れている離島、五島列島・五島市。移住者の7割以上が30代までの若者世代で、移住者の定着率は8割という人気の島。古い歴史や文化にも恵まれ、新しい事業や雇用が生まれ続けています。「よかったい」精神の、おおらかで開放的な島民性も魅力。